【土壌分析】コンクリートと六価クロムの関係について

土壌環境基準の分析業務の中で、六価クロムのみの溶出試験のご依頼を受けることがしばしばあります。これらの案件の検体は、コンクリート類やそれらを原料とした改良剤などが多く、コンクリートと六価クロムには何らかの関係があるようです。今回はコンクリートと六価クロムの関係について触れていきたいと思います。

なお、六価クロムについての基本的な情報は、【産廃分析.com】の六価クロムのコラムにて紹介しております。興味のある方は、そちらのページもご参照ください。

【産廃分析.com】六価クロムってどんなもの? 毒性と基準値

なぜコンクリートから六価クロムが溶出しやすいのか

コンクリートから六価クロムが溶出しやすい主な理由は、原料であるセメントに由来する微量のクロムが、セメントの製造過程で酸化して六価クロムとなり、コンクリートが固まる過程(水和反応)で完全に固定されずに残存してしまうためです。

六価クロムが溶出しやすいメカニズムには、主に以下の要素が関わっています。

1. セメントの製造工程

  • 原料由来のクロム
    セメントの原料である石灰石、粘土、鉄滓などには、微量のクロムが含まれています。
  • 酸化による六価クロムの生成
    これらの原料を高温で焼成する際、含まれていた三価クロム(比較的安定な状態)が酸化され、水に溶けやすい六価クロムに変化します。

2. コンクリートの硬化過程(水和反応)

  • 高アルカリ環境
    セメントに水を加えると水和反応が起こり、水酸化カルシウムなどが生成されてコンクリート内部は強いアルカリ性(pH12~13程度)になります。
  • 六価クロムの固定化
    この水和反応の過程で、六価クロムはセメント中の還元物質によって三価クロムに還元されたり、カルシウムなどと反応して不溶性の化合物になったりすることで固定化されます。
  • 固定化されない六価クロム
    しかし、一部の六価クロムは完全に固定されずに水和物の隙間などに残存することがあり、これが溶出の原因となります。

3. 六価クロムの溶出を促進する要因

  • 土壌の性質
    地盤改良などでセメントと混合する土壌に、アロフェンなどの水和反応を阻害する粘土鉱物が多く含まれる場合、六価クロムの固定化が不十分となり、溶出しやすくなります。
  • 水分
    雨水などの浸透水によって、コンクリート中のアルカリ環境下にある六価クロムが溶け出しやすくなります。浸透水の量が多いほど、溶出は促進されます。
  • 還元物質の有無
    土壌中に硫黄などの還元性物質が十分に含まれていない場合、六価クロムが三価クロムに還元されず、溶出リスクが高まります。

溶出を抑える対策

六価クロムの溶出を抑制するためには、以下のような対策がとられます。

  • 高炉セメントの使用
    還元剤となる高炉スラグを多く含む高炉セメントは、普通ポルトランドセメントよりも六価クロムの溶出が少ないとされています。
  • 溶出低減型セメント系固化材の使用
    溶出量を低減する工夫がされた特殊な固化材も開発されています。
  • 事前の溶出試験
    現場で用いる土壌と固化材の組み合わせで事前に溶出試験を行い、環境基準を満たしているかを確認します。 

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