土壌汚染調査とは

土壌汚染調査は、土地の土壌汚染の状況を把握し、適切な対策を講じるために必要なプロセスです。土壌汚染は人々の健康や環境に直接関係し悪影響を及ぼすため、適切な調査と対策が欠かせません。本記事では、土壌汚染調査の目的、プロセス、法令に関する概要を説明します。

土壌汚染調査の目的

土壌汚染調査の主な目的は、土地の土壌汚染の有無や程度を把握し、適切な対策を立案・実施することです。主に、以下のようなケースで調査の実施が検討されます。

土壌汚染対策法に基づき、調査命令が出た場合

  1. 特定の有害物質を製造、使用又は処理する施設(特定施設など)の使用が廃止された場合(法律第3条)
  2. 一定規模以上の土地の形質変更の際に、土壌汚染のおそれがあると知事が認めた場合(法律第4条)
  3. 上記の他に土壌汚染により健康被害が生じるおそれがあると知事が認めた場合(法律第5条)

上記①~③の場合、行政より土壌汚染対策法にて制定された土壌汚染の調査=土壌汚染状況調査の実施や届出を、土地の所有者に求められることがあります。

こちらの調査は環境大臣の指定する指定調査機関のみ請け負うことができます。土壌汚染状況調査は、土地の履歴調査、調査対象の区域・区分・深度計画、実際の試料採取・分析、調査の取りまとめ・届出資料の作成など、フェーズごとに作業内容が多岐に渡り、専門性が高い業務です。

ただ土壌調査や分析の結果を提出すればよいという訳ではなく、調査業務に耐えうる人員・設備を有した機関にての実施を義務付けています。
(土壌汚染対策法については環境省のガイドライン等にて概要を確認することができます)

土地売買や開発の際

上記のような土地ではない場合でも、土壌汚染がある場合、土地価格や利用方法に影響が出る可能性が高いため、土壌の汚染調査を実施することがあります。不動産売買などで取引前に実施するケースなどが最近では多いようです。
土地によってはその区域独特の特性に由来する天然の汚染も存在するため、汚染物質の使用履歴がなくとも、分析を実施する価値はあります。

・事故や漏洩

工場や処分場などで有害物質の事故や漏洩が発生した場合、土壌汚染の範囲を特定し、適切な対策を講じるために調査が行われます。
土壌汚染は地下水を媒介して汚染が広がる可能性があるため、汚染の恐れのある範囲、規模、影響する深度、地盤の特性、地下水の流入経路・方向など様々な状況から対応方法を決めていきます。

土壌汚染調査のプロセス

土壌汚染調査は、一般的に以下のプロセスで行われます。

1. 地歴調査

地歴調査は、既存の資料(登録簿、住宅地図、空中写真など)を調査し、土壌汚染の可能性を評価するものです。地域によっては管轄行政にて土壌の有害物質のモニタリング結果を情報開示している場合もありますので、そのような情報も収集します。この段階では、土地の履歴や周辺環境から汚染のおそれがあるかどうかを判断します。

2. 土壌汚染の程度の推定・区画分け

地歴調査で得た情報をもとに、その土地の土壌の汚染の恐れを推定します。危険性が高いと予測されるエリアはより細かい区画に分け、比較的狭い範囲ごとにボーリング調査や分析検体の採取を行います。逆に汚染の可能性が低いエリアは、危険度の高いエリアに比べて広めの区画に分けます。
このように汚染の状況により調査対象の敷地を区画分けし、土壌汚染のリスクの度合いによってボーリングの地点・深さ・点数や分析検体の採取地点・点数を決めていきます。

3. 土壌汚染状況調査

土地の区画分けに則り、ボーリング調査や土壌採取を実施します。分析が必要な場合は、土壌ガス・地下水・土壌など対象物資ごとに適切な方法でサンプリングし、分析します。結果は検体ごとに報告書にまとめられ、各地点でどのような汚染があるかまとめ、状況を具体的に把握します。

4. 土壌浄化対策

調査で明らかになった状況から、土壌汚染対策や汚染物質の浄化などを検討します。対策の内容は現実的に実現可能かを含め、土地の状況や汚染の強度、汚染物質の種類などから策定されます。

掘削除去や土壌入れ替え、原位置浄化など、汚染そのものを除去する手段は複数ありますが、対策実施が困難な場合は暫定的に土壌(汚染)の飛散(拡散)防止を講じるに留まる場合もあります。

5. モニタリング調査

対策実施後、定期的に対象有害物質についてモニタリングを実施します。除去対策に対しては除去がなされているか、飛散(拡散)防止策に対しては封じ込めが上手くいっているか(周辺に流出していないか)の確認が目的となります。

土壌の汚染は地下水を媒介して拡散することが多いため、周辺に井戸を掘って地下水をモニタリングすることも多いです。
(地下水汚染が生じていないかの確認にもなります)

ご依頼からサンプリング、調査・分析までの流れについてはこちら

土壌分析についてさらに詳しくはこちら

土壌汚染対策法に基づく指定調査機関

土壌汚染調査は、環境省が指定する「指定調査機関」に依頼しなければなりません。指定調査機関は、環境省の基準に基づいて調査を行い、その結果を報告します。また、指定調査機関は、技術管理者が監督し、品質管理体制を整えています。

土壌汚染調査に関する法令は、以下のようなものがあります。

土壌汚染対策法(環告18・19号)全項目検査についてはこちら

土壌汚染調査での主な汚染物質

土壌汚染調査では、以下のような主な汚染物質が対象となります。

  • 第一種特定有害物質:揮発性有機化合物類(ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなど)
  • 第二種特定有害物質:重金属類(鉛、カドミウム、六価クロムなど)
  • 第三種特定有害物質:農薬類(シマジン、チオベンカルブ、チウラム、PCBなど)

これらの汚染物質は、土壌汚染対策法や土壌の環境基準、水質汚濁防止法などにおいて、摂取量などを基に基準値が設定されています。また、これら以外にも、ダイオキシン類や放射性物質、油汚染などの特殊な汚染物質に対する調査も行われることがあります。
土壌試料は各地点から採取したものを1試料とすることが基本ですが、場合によっては複数の点の試料を等量に混合し、それを1試料として扱うこともあります。

土壌汚染調査の分析全項目、土壌含有量基準はこちら

土壌汚染対策法に基づく土壌汚染状況調査での分析項目

特定有害物質土壌含有量調査土壌溶出量調査土壌ガス調査
第1種特定有害物質 揮発性有機化合物※ 
第2種特定有害物質 重金属等○ 
第3種特定有害物質 農薬等○ 

※土壌ガス調査で特定有害物質が検出された場合に実施

土壌汚染状況調査での特定有害物質と基準値

種 別特定有害物質土壌ガス濃度による 判定基準1)土壌汚染対策法指定基準5)第2溶出量 基準(mg/L)6)
土壌溶出量 基準(mg/L)2)土壌含有量 基準(mg/kg)3)
土 壌 汚 染 対 策 法 に お け る 特 定 有 害 物 質第 一 種四塩化炭素検出されないこと4)
定量下限値0.1volppm未満
ベンゼンのみ0.05volppm未満
0.0020.02
1,2-ジクロロエタン0.0040.04
1,1-ジクロロエチレン0.11
1,2-ジクロロエチレン0.040.4
1,3-ジクロロプロペン0.0020.02
ジクロロメタン0.020.2
テトラクロロエチレン0.010.1
1,1,1-トリクロロエタン13
1,1,2-トリクロロエタン0.0060.06
トリクロロエチレン0.010.1
ベンゼン0.010.1
クロロエチレン0.0020.02
第 二 種カドミウム及びその化合物0.003450.09
六価クロム化合物0.052501.5
シアン化合物検出されないこと4)遊離シアン501
水銀及びその化合物0.0005150.005
アルキル水銀7)検出されないこと4)検出されないこと4)
セレン及びその化合物0.011500.3
鉛及びその化合物0.011500.3
砒素及びその化合物0.011500.3
ふっ素及びその化合物0.8400024
ほう素及びその化合物1400030
第 三 種シマジン0.0030.03
チオベンカルブ0.020.2
チウラム0.0060.06
ポリ塩化ビフェニル検出されないこと4)0.003
有機りん化合物検出されないこと4)1

注1) 土壌ガス調査に係る採取及び測定方法は,平成15年3月6日環境省告示第16号による。
注2) 土壌溶出量調査に係る測定方法は,平成15年3月6日環境省告示第18号による。
注3) 土壌含有量調査に係る測定方法は,平成15年3月6日環境省告示第19号による。
注2) 注3) 公定法分析はこちら
注4) 「検出されないこと」とは,1)もしくは2)に示す方法により測定した結果,当該方法の定量限界値を下回ることをいう。
注5) 基準値はそれぞれ“以下”であること。
注6) 第2溶出量基準は措置の選定に必要となる。
注7) アルキル水銀は水銀に含まれるが、水銀及びその化合物として溶出量が検出された場合は、単独でも測定する必要がある。

土壌汚染調査の手順

土壌汚染調査は、以下の手順で行われます。

  1. 土地の履歴を調べる(地歴調査)
  2. 土壌サンプリングを行う(土壌汚染状況調査)
  3. 分析結果を評価し、対策を立案する
  4. 対策を実施し、その効果をモニタリングする

土壌汚染調査は、この一連のプロセスを経て、土壌汚染の有無や程度を把握し、適切な対策を講じることができます。

※ ご依頼からサンプリング、調査・分析までの流れについてはこちらをご覧ください

土壌汚染調査の費用

土壌汚染調査には、法的な義務による調査と自主調査の2種類があり、それぞれの調査の目的や手順、費用が異なります。また、土壌汚染調査は、地歴調査、概況調査(表層土壌調査)、詳細調査(ボーリング調査)などの手順ごとにそれぞれコストが発生するため、調査の内容によって必要な費用が大きく異なります。

土壌汚染調査の費用についてさらにくわしく

⇒ 土壌分析の価格・料金はこちら

土壌汚染調査の実施例

土壌汚染調査は、様々なケースで実施されます。ここでは、いくつかの実施例をご紹介します。

  • 工場跡地や事業場跡地の土地売買や開発
  • ガソリンスタンドやクリーニング店舗跡地の土地利用変更
  • 有害物質を取り扱う施設(特定施設)の廃止や移転
  • 都市開発や住宅建設に伴う土地の形質変更
  • 工事などで発生した一定量の建設発生土や残土の移動・搬出・搬入(条例等で規定されている場合)
  • 土壌表層に油膜が生じる、土地を掘削したところ産業廃棄物らしきものが埋設されていた、など土壌の汚染が疑われる事象が発生した場合

土壌汚染調査の注意点

土壌汚染調査を行う際には、以下のような注意点があります。

  • 法律(土壌汚染対策法)に基づく土壌汚染調査は、土地の所有者に実施を命じられます。また環境省指定の調査機関に依頼することが求められます。
  • 調査結果は、都道府県知事や市町村長に報告し、公開されることがあります。
  • 土壌汚染が確認された場合、適切な対策が必要となります。対策の方法は、汚染物質や状況によって異なります。調査結果によっては、その敷地への立ち入りを規制するなど、追加の措置が講じられる可能性もあります。
  • 土壌汚染調査は、環境や人々の健康を守るために重要です。健康被害の抑制のためにも適切な調査と対策が行われることが求められます。

まとめ

土壌汚染調査は、土地の土壌汚染の状況を把握し、適切な対策を講じるために重要なプロセスです。

法令や条例に基づく調査が求められる場合はもちろんですが、不動産の売買や土地の開拓などの際に自主的に調査を行うこともあります。
土壌汚染対策法に基づく正式な調査命令の場合は、指定調査機関での実施が必須ですので、近隣の指定調査機関を調べ、相談するとよいかもしれません。
土壌の汚染は、周辺の環境やその土地で生活する人々の健康に関わる重要な要素です。環境や自身を守ることにもつながる大切な調査であるといえるでしょう。

当社では主に土壌の分析・試験のフェーズについて請け負うことが可能です。基本的な溶出試験・含有試験のほか、ダイオキシン類などの少々特殊な分析も実施できます。地下水汚染の恐れがある場合は、地下水の分析も可能です。試料を採取し、当社へ発送するだけで分析が可能ですので、土壌分析でお困りの際はぜひご相談ください。

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