溶出試験と含有試験の違いについて まとめ

前回までのコラムにて、溶出試験、含有試験それぞれの目的や試験方法にて解説してきました。今回は当初の目的に立ち返り、溶出試験と含有試験の違いについて改めてまとめていきます。

溶出試験含有試験の違いについて(前回までの解説)

土壌における溶出試験と含有試験の違い


溶出試験

含有試験

試験の内容検体から対象の(有害)物質がどれだけ水に溶け出すか、を調べる試験検体に対象の(有害)物質がどれだけ含まれているか、を調べる試験
試験の目的地下水や雨水を媒介して、ほかの土地に汚染を拡散するリスクがどれだけあるか評価する土壌が人体に取り込まれた場合に、健康被害を及ぼすリスクがどれだけあるか把握する
規定項目27項目土壌環境基準では28項目9項目土壌環境基準では2項目
前処理溶媒酸溶液等
結果単位mg/Lmg/kg
関係法令環告18号(環告46号)など環告19号など
※土壌汚染対策法をベースとする場合

溶出試験は土壌から有害物質が水に溶け出す量、含有試験は土壌そのものに含まれる有害物質の量、を調べると考えますと、分かりやすいかと思います。

溶出試験は主に環境に対する汚染の指標となります。土壌が保有する汚染は、地下水や雨水といった水を媒介として広がることが多いため、「水に溶け出す」という特殊な状況を指標に採用しています。土壌に対する溶出試験の方法は、環告46号の溶出試験が一般的です。(環告18号の溶出試験も、基本的に環告46号の方法を踏襲したものとなります。)

含有試験は溶出試験に比べ、より土壌そのものに含まれている有害物質の量について調べることができます。土壌に対する含有試験の方法は複数あり、土壌汚染対策法では人体への悪影響を主眼に分析方法や基準値が規定されています。分析方法ごとに得手不得手があるため、目的に沿った適切な含有試験を選ぶことが重要となります。

溶出試験と含有試験のまとめ

溶出試験と含有試験は、実際の分析内容が異なり、結果数値の単位も異なっています。そのため同じ項目であっても、一方の結果を以ってもう一方の結果とすることは基本的にはできません。

「そもそも有害物質が含有されていないのならば、溶出もすることはない」という考え方は最もではありますが、実際は検体の性状や特性により以下のような事象が起こり得ます。

・非常に多くの量を含有しているが、そのほとんどが溶出しない

・微量な量しか含有していないが、そのほとんどが溶出してしまう

したがって、「溶出(含有)の結果が基準値を満たしていれば、含有(溶出)の結果も問題ないだろう」と言い切ることができません。溶出試験と含有試験のそれぞれの基準値と比較したい場合は、それぞれの試験を実施する必要があります。

以上が溶出試験と含有試験の違いの基本となります。不明点や、より専門的な部分について知りたい方は、ぜひ担当者まで直接お問合せください。

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